アルコール依存症『ばかもの』絲山秋子
久々に出た、アルコール依存症小説です。
これまでに有名なAL小説といえば、
『酔いが覚めたらうちに帰ろう』鴨志田譲
『今夜、すべてのバーで』中島らも
などがあります。どちらも自伝で、リアルで、読んでいて面白い。読みやすさで言えば、『今夜、すべてのバーで』の方がお勧めです。
で、今回の『ばかもの』ですが、主人公は大学生のヒデ。気弱な男子。冒頭から濃厚なセックスシーンが続きます。これが長い。そしてグロテスク。
相手は27歳の、ちょっと突っ張った女、額子。
ヒデは額子から、あり得ない屈辱的な振られ方をします。
お気楽な日々が徐々にシリアスになっていき、
ふとした拍子におぼえたお酒の味が、ヒデを地獄へと引きずり込んでいきます。
ヒデはアルコール依存症で、職も友人も、そして大切な恋人も失うのです。
このあたりは読んでいて、母を思わざるを得ませんでした。
父と母もこんな会話を交わしたんだろうか・・・
「なんで俺がお前のことを殴ったんだ?」
「もうこれ以上飲まないでって言ったら、おめーに何がわかるんだってビンタされた」
「俺そんなことしたんか」
「うん」
「ごめんな、ごめん」
「もうしないって約束して」
「おう、約束するよ。絶対そんなことしない。あああ俺、自分が信じらんねーよ」
「私、今のヒデくんは大好き。でも本当に怖かった。殺されるかと思った」
いや、ないですね。
私の父が謝るなんて想像つかない。少なくとも私はDVに関して一度も謝られた記憶がない。でもまー夫婦のことはわかりませんので、今後機会があったら訊いてみよう。
絲山秋子さんはデビューして、まだ五年の作家です。
が、その風格たるや凄いものがあります。
『袋小路の男』川端賞
『沖で待つ』芥川賞
などといった受賞もそうですが、とにかくどの作品もはずれなし。すらすら読めてしまいます。
個人的にはデビュー作の『イッツ・オンリー・トーク』がお勧めです。
ストーリーも全体的な雰囲気も新しく、おお~! と衝撃を受けました。
絲山秋子さんは1998年に躁うつ病を発症しています。
小説にも精神を病んだ人がたくさん出てくるんですが、ただ暗く暗く掘り下げていくのではないところが好きです。
希望の光を残して終わる、みたいな単純なことじゃなく、ストーリー自体が面白いので病んだ部分がメインじゃなくなるというか・・・
『今夜、すべてのバーで』『酔いが覚めたらうちに帰ろう』に続く、三大アルコール依存症小説になると思います。
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