酒を飲んで人を殺しても無罪
まことにわが日本は、
酒をたしなむ人のためには天国である。
現代文明諸国中、酒を飲みすぎ
自ら招いて弁識能力を失い、他人を殺傷した犯人を
法律を以てこれほど厚く保護している国は
稀であろう。
酔っぱらい同士のけんかが高じて、殺人未遂の罪に問われた被告人に対して、事件当時に心身喪失状態にあったと認定し、責任能力がなかったことを理由に無罪判決が言い渡されました。
1956年7月5日。京都地裁。
上記は『裁判官の人情お言葉集』(長嶺超輝)より抜粋しました。
私は以前からこのブログで「日本のアルコールに寛容な風潮が、アルコール依存症を増やす要因の一つである」と書いてきました。
冒頭の判決は50年前のもので、今でこそ大暴れして騒ぎまわる花見客や、飲酒運転の結果交通事故を起こすドライバーなどは白い目で見られます。
けれど「無礼講」などといったあほらしい言葉を筆頭に、酔っ払いに対する大らかさは当時とほとんど変わっていないのではと思えます。
『裁判官の人情お言葉集』によると、刑法学では、人にはふたつの能力が備わっているものと考えるそうです。
1.事理弁識能力
ことの善悪や周囲の状況を判断する能力
2.行動制御能力
自己の言動をコントロールする能力
これらふたつの能力があるのに、それでもなお法を犯すのなら、あなたの責任でしょ、だから処罰しますよ、というわけです。
裏を返せば、なにも判断ができず、自分の行動をコントロールできないようなら、法に反しても刑事責任を問えない、という帰結になります。法の知識が薄い私にはこのあたりがよくわかりません。39条なんて映画もありましたけど・・・
刑法39条は「心身喪失者の行為は罰しない」と定めています。
一方で刑法39条の例外を立てる考え方があります。酒や薬物を飲んで一時的に気を失ったなら、それは飲んだ行為が悪いんだから、事件時の心身喪失状態を言い訳にするな、という発想です。これを「原因において自由な行為(略して原自行為)」というそうです。
ビンゴ!!
私の心情にぴったりな考え方です。
そうよ! 飲んだ行為が悪いのよ! 酒や薬物による心神喪失は、自己責任!!
原自行為の理論を使えば、酒を言い訳にさせない欧米諸国での対応に近づきます。冒頭の判決時には、原自行為を初めて採用した最高裁の判例もすでに出ていたそうです。ではなぜこの件では採用が見送られたのか?
酒によって暴れだすクセを被告人があえて利用した証拠がない、ということがその要因だそうです。よくわかりません。
かといってこの裁判長が酒に寛容だったわけではなく(冒頭の判決文をご覧いただければわかるように)、原自行為を条文にはっきり書き記し、酒酔い暴行の常習犯は療養所で治療するよう法改正を訴えました。が、いまだ刑法39条は変わっていません。
自分の責任で酒を飲み、人を殺した人が無罪になる。
こんな日本。
さきほど法の知識が薄いと書きましたが、そんなことも言っていられません。2009年の夏から、裁判員制度が動き出すからです。私たち一般国民も刑事裁判の審理に加わって判決を出す・・・
とっかかりとして、『裁判官の人情お言葉集』はオススメです。泣ける判決もあります。
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